庭仕事講座

「フローラルガーデンの庭仕事」H29年4月21日の内容です。次回は5月19日「土とコンポスト」根が育つ環境づくり。
■ フローラルガーデンの庭仕事講座/毎月第3金曜日 10:00〜11:30
イギリスのガーデン本を読み解きながら庭目線の園芸基礎知識を学ぶ勉強会。
園芸と庭づくりの基礎を学ぶとともにフローラルガーデンの植物について説明します。
〈講師〉 株式会社フィーカ 近藤かおり(フローラルガーデンよさみチーフガーデナー) 
〈定員〉70名 〈参加費〉 無料
*お申込みはフローラルガーデン事務局0566-29-4330またはinfo@garden-yosami.jpまで


春のフローラルガーデン

「植物のしくみ」基本的な植物の性質

What plants need ? 〜 植物が必要としているのは? 〜
植物を幸せに育てるために必要なことは、生育環境を良い状態に創造する秘密を自然の法則から見い出すことです。
by Alan Titchmarsh

1、 植物がしていること

植物は動き回れません。しかし、驚くほど洗練された機能を持っています。それはまるで生きた工場です。空気や太陽光、水、土と一緒に、デンプンや脂質、たんぱく質、色彩を生み出す物質、ホルモン、酵素など、とても複雑な製品を生産しています。

2、植物に必要なもの

① 水 (Water)
植物は80%以上水で作られています。しかし体内の水は保存されず、通過しています。水はヒゲ根から吸い込まれ、葉から蒸発します。植物はちょうど大きな芯のようです。暑い夏の日はオークのような巨大な木は300Lの水が地面から吸い上げられ70万の葉から蒸発しています。
水は植物の体内にあるものすべてを運んでいます。水は光合成の材料となり二酸化炭素を分解し、酸素を生成します。そして鉱物の栄養は土の中から水に溶かして取り入れられます。多くのガーデナーが知っているように植物が早く成長するために多くの水が必要です。暑くて空気が乾燥すると植物から気孔を通して、より多くの水分が早く失われます。要求するペースで水分を保てない時は気孔が閉じます。これは空気が抜けた風船のようにしぼんだ時に起こす細胞を守る特別な機能です。鉢植えでいつも乾いた状態だったり温室などで暑すぎる環境に置かれると植物は通常の状態に戻るまで成長を止めます。そのまま悪い環境に置かれたままだと植物は水分を失い、萎れ始めます。萎れると細胞の形が変形し気孔が丸くなくなり水分の蒸発を抑えることができます。
肥料も水も足りているのに元気がなく、萎れている植物が何を要求しているかわからない時は30℃を超えているかどうかが一つの目安になります。植物は気温が30℃を超えると成長を止め涼しくなるまで待っています。
新しい根は水を求めて成長します。幼苗は根が少ないため水分を失いやすく、風が強い日は特に早く乾くので注意が必要です。

②栄養(Nutrients)
植物の体は、光合成により空気と水から変化させた酸素や二酸化炭素、水素、さらに約30種類の物質が土の中から取り入れられて作られたものです。
3つのメインの栄養物質は窒素、リン酸、カリウムです。これらはすべて土の中から供給します。通常植物が彼ら自身で庭の土の中から必要な栄養物質を探し出すので難しく考える必要はありません。

③空気(Air)
空気は植物に酸素と二酸化炭素を供給します。太陽の光が当たると二酸化炭素は水と反応し光合成の材料として利用されます。光合成により糖とデンプンが作り出され、その過程で酸素も生産します。糖は植物の成長や土から栄養素を吸い上げるエネルギーとして利用し、デンプンは植物を構成する要素になります。
空気は3大栄養素の一つ窒素も供給します。空気中の窒素は雨により土の中に入り、マメ科の植物の根やバクテリアがすむ有機質がたっぷり含まれた健康的な土に留まり、植物の栄養素として利用されます。

④光(Light)
植物が持つ完璧な内部工場、光合成システムは光が当たると動き始めます。植物は光が当たると空気中の二酸化炭素と土の中から吸い上げた水を反応させ、酸素と糖、デンプンなどの物質を作り出し、植物を成長させていきます。
光合成システムは光が十分でないと十分に働きません。しかし、幾つかの植物、シダやホスタ、トロピカル植物(観葉植物)など、自然界において樹木の下で生育するものは弱い光の中でも効率よく働くように進化しています。室内など光が弱く空気が乾燥する場所でも生育可能なのは自然界でそのような環境に生育していたからです。光が当たらない場所は土が乾きにくく、葉からの蒸散も少ないので長い時間水分が保たれます。日陰を好む植物を日当たりの良い場所に植えると光の量を受け止めきれず太陽の光により葉焼けします。日当たりを好む植物は葉に直接光が当たることが必要で、光がより多く当たるように枝葉を伸ばしていきます。光が十分当たらない場合、花が咲かなくなることもあります。
自然界において強い光を常に浴びている地域に生息する植物は、自己防衛する形に進化しています。葉や茎をシルバーにして光を反射したり、ワックスで覆って乾燥を防ぐなどして熱くなりすぎないようにしています。
植物は野生ではどこで成育するかを選択しています。植物がどのようなコンディションで成育するかを知ることは植物をより良く育てることにつながります。

⑤暖かさ(Warmth)
植物は地球上のほとんどで生育しています。海の中や砂漠、凍った大地にも存在します。しかし、同じ植物がどこでも生育できるわけではありません。異なる植物が異なる温度下で適応するように進化しています。
植物を育てるときに起こるトラブルは多くの場合、温度の適応がうまくいかないケースです。庭には世界中から植物が集められています。
寒い地域や標高が高い地域では成長する期間が短く、花をつけ種ができるまで短期間で行います。彼らは細胞が凍らないように内部に保持できる仕組みを持っていて氷点下でも生きられるようになっています。
暑い地域では暑さ寒さを繰り返す独特のサイクルを持っていて、しばしば真反対の環境、雨季と乾季にさらされます。植物はそれに対応するように進化しています。チューリップが良い例で、トルコやイラン原産で、適度に湿り気のある冬に成長し、暖かい春になると暑さから逃れるため球根に栄養をため込み、乾燥する暑い夏を乗り切ります。

⑥土(Soil)
土はさまざまな物質が混ざって作られています。岩の多くは何万年もの時を超え、時々起こる氷河期によりゆっくりと岩が砕かれ砂利になり、鉱物のチリになっていきます。石灰土壌は海底に堆積した貝殻や何兆もの海底の小さな生物が生死を繰り返してできた土壌で地殻変動により隆起し地上に現れ他ものです。今も岩は砕けて砂利や砂になり、土の中に存在しています。
土の中に存在する化学物質はもともと岩に含まれています。オーストラリアではリン酸分を含む岩が少ないため土壌にリン酸が足りないことが多くあります。火山活動による火山灰が多く含まれる土壌は植物に必要な栄養がたっぷり含まれた肥よくな土壌です。インドネシアでは肥料を使って植物を育てることはありません。栄養豊富な火山灰土は作物を育てるのに十分な栄養を含んでいるからです。
土は動物の糞や死骸、枯れた植物などからなる有機質も含んでいます。有機質は深い森に多く含まれていて、枝や葉の堆積物からなる土は植物に栄養を補給するのに適した土壌です。

 〈参考文献〉
The Complete How to be a Gardener / Alan Titchmarsh


「フローラルガーデンの庭仕事」H29年3月17日の内容です。次回は4月21日「植物の仕組み」基本的な植物の性質。
■ フローラルガーデンの庭仕事講座/毎月第3金曜日 10:00〜11:30
イギリスのガーデン本を読み解きながら庭目線の園芸基礎知識を学ぶ勉強会。
園芸と庭づくりの基礎を学ぶとともにフローラルガーデンの植物について説明します。
〈講師〉 ケイズガーデン 近藤かおり(フローラルガーデンよさみチーフガーデナー) 
〈定員〉70名 〈参加費〉 無料
*お申込みはフローラルガーデン事務局0566-29-4330またはinfo@garden-yosami.jpまで


春のフローラルガーデン

「暮らしの中の庭づくり」庭の環境と植栽計画

What is your garden design ?
あなたが小さな庭を持っていて、そこをもっと良い形に利用しようと思った時、プロのガーデンデザイナーに頼む必要はありません。あなたが気づいたちょっとしたこと、こうしたいと思ったことを紙にいたずら書きするだけでデザインは始まります。
by Alan Titchmarsh

1、 あなたの庭に必要なのは?

庭づくりをする多くの人は一か八かで始めます。子どもが遊ぶために芝生を敷いたり、物置に向かって小径を造ったり、ガーデンセンターで気に入った材料を買ってきてくつろぐスペースを作ったり。それらはどんどん増えていって大きくなり、いくつかは考えていた枠をはみ出します。

私の経験では人々が庭づくりに求めているのは「進化」または「革命」のどちらかです。
「進化」は決して終わることがありません。庭を持った時から始まり、あなたのライフサイクルに合わせて変化します。子どもが大きくなると庭は子どもの遊ぶ庭から大人の庭へ、あなたのお気に入りの庭へ変えることが出来ます。あなたの庭に必要なのは長期計画と短期計画です。
「革命」は今あるものを壊すことから始まります。コツコツ数年かけて気に入った空間を自分で作り上げる人や、ガーデンデザイナーに設計を頼み、造園業者に施工をしてもらう人もいます。しかし、理想の庭を得られるようになるには時間がかかります。植物が思ったように育たないこともあります。計画通りに行かないことを悪く思わないで下さい。計画は良いアイデアに過ぎません。深みにはまる前に柔軟に考えて下さい。

2、デザインによる問題解決

自然の法則から離れたところからスタートする庭もありますが、それは大変難しく、お金がかかります。戦わないで、問題を見つけたら自然の声に耳を傾けて下さい。全体を見渡して自然の法則に従うことが「たったひとつの庭」を作り出すことができる、一番簡単で唯一の方法です。

① 海辺の庭
強い風が吹き、砂や塩が積もる海辺のガーデン。その土は通常厳しく、砂利や砂ばかりで栄養が乏しいものです。これらのコンディションでは普通のガーデンプランツは生育することが出来ません。
〈解決するデザイン〉
2つの方法があります。ひとつは海辺のガーデンにする方法です。海辺に生えている植物を選び、流木や貝殻、丸石を使い、海辺らしさを演出します。
もうひとつは材料を慎重に選び普通のガーデンに見せる方法です。潮風に強いクロマツやマサキ、ガーデンフクシア、エスカロニアなどを使い、庭を作ります。

②夏中地面が乾かない湿った土地
多くのガーデンプランツは適当に水はけの良い土地を好みます。なぜならソイルスープ(水のたまる場所)の中に根がつかったままだと根腐れするからです。
〈解決するデザイン〉
このような土地には湿地ガーデンを作ります。もつれた枝や木の固まりを入れ、本物の沼地の様な特徴を出します。柳のパネル、雰囲気のある風化したガゼボも良い演出材料です。
沼地の周辺で生育している植物は5cmほど水に浸かっています。下が水に浸かっている状態で生きている自然界の植物はスティック状の葉の形をしているものが多く、このタイプの植物は低地で冬に水が溜まる場所でも使用できます。ホスタやカンデラブラ プリムラ(中国原産のサクラソウ)など湿気が好きな多年草や、自然の小川周辺に生息する植物を見つけて植えることも良いでしょう。場所があるならグンネラもお勧めです。ただし、大きくなりすぎるので家庭の庭には向いていませんが。

③日当りの良い傾斜地
この環境は乾きが早く、植物は乾燥に苦しみます。加えて、その土は激しい雨によって流されてしまいます。あなたがブドウ園を欲しくない限り、そこはあなた好みの植物にとって、最も厳しい環境かもしれません。
〈解決するデザイン〉
石積み等で土留めをしてテラス花壇を作り、乾燥を好む植物を植えます。日当たり好きなシュラブや多年草、ロックガーデンプランツを植えましょう。そこは夏には特に乾燥することを忘れないでください。常緑のものを多用し、冬にも見栄えが良いようにしましょう。

④林の中の木陰
夏に影になるこの場所はカラフルなボーダーガーデンプランツを育てるのは難しい場所です。大きな木の下は乾きやすいと理解している人も多いかもしれませんが、天然の林は違っています。枝が密に重なり、落ち葉が堆積している地面には有機質材料がたっぷりあり、水分が保たれる環境になっています。日陰好きな植物にとっては完璧な土壌がそこにあります。
〈解決するデザイン〉
腐葉土の下で育ちやすい早春咲きの球根、宿根草など日陰を好む植物を植栽します。紅葉や林床植物、アジュガ、サクラソウなどが向いています。もし土壌が酸性に偏っているなら、ロードデンドロンや椿などのように酸性を好む植物を植えると良いでしょう。

3、 様々なガーデンデザイン

イングリッシュガーデンと一言で言っても伝統的なデザインから現代の庭まで様々な庭があります。イギリスで作られている庭の特徴を簡単にまとめました。

現代の庭
【植物】シャープでスタイリッシュな植物。多肉植物やオーナメンタルグラス等
【構成材料】伝統的な材料ではなく工業的な材料を多用。ガラス、ステンレス、銅管等
【特徴】次世代を感じさせるデザイン。植物壁等。明るい色彩の壁や床のデザインでドラマティックな植物をシンプルに植栽

ナチュラルガーデン
【植物】原種系の植物。その地域に自生している植物
【構成材料】ビオトープになるような自然な生態系を作る。倒木や自然石など自然環境に存在するものを利用する
【特徴】自然な風景に見えるように作るデザイン。柳やヘーゼルなどの自然素材を使ったフェンスに植物を絡めて自然な風景を演出

ファミリーガーデン
【植物】木登りやフットボールに耐えられる丈夫な植物。毒素やかぶれる物質を持つ植物は避ける
【構成材料】芝生やバークチップなどで覆い、走ったりスライドしたりできるようなオープンスペースを確保
【特徴】活発に遊ぶ子供中心の庭。自分自身の手で育てる子供用の果樹や野菜ポットを与え、収穫を体験させると子供が庭づくりを楽しめる庭としても活用できる

ペイブドガーデン(舗装された庭)
【植物】鉢植えに向く植物。ハーブや小型の樹木
【構成材料】砂利や石材で地面を覆う。ポットや家具でポイントになる景色を作る
【特徴】色や形の面白いものを所々に混ぜてデザイン。砂利や構造物で特徴を出す

コテージガーデン
【植物】様々な多年草、花木、シュラブ、球根等
【構成材料】草花を中心としたボーダーガーデンと芝生で構成。風化した構造物を景色として利用
【特徴】ボーダーガーデンと芝生を中心に小径などで区切りながらデザイン。オベリスクやガゼボ等で立体感を出す

フォーマルガーデン
【植物】トピアリーやボックスウッドなど刈り込みに強い常緑樹
【構成材料】石やレンガの壁、生垣で区切られた空間を構造物で演出
【特徴】直線的なデザイン、四角いコーナーで構成される。彫像やトピアリーをポイントに置くデザイン

 〈参考文献〉
The Complete How to be a Gardener / Alan Titchmarsh


「フローラルガーデンの庭仕事」H29年2月17日の内容です。次回は3月17日「「暮らしの中の庭づくり」庭の環境と植栽計画。
■ フローラルガーデンの庭仕事講座/毎月第3金曜日 10:00〜11:30
イギリスのガーデン本を読み解きながら庭目線の園芸基礎知識を学ぶ勉強会。
園芸と庭づくりの基礎を学ぶとともにフローラルガーデンの植物について説明します。
〈講師〉 ケイズガーデン 近藤かおり(フローラルガーデンよさみチーフガーデナー) 
〈定員〉70名 〈参加費〉 無料
*お申込みはフローラルガーデン事務局0566-29-4330またはinfo@garden-yosami.jpまで


夏のボーダーガーデン

「夏に活躍する植物」夏咲きの一年草と多年草

The Making of Plant Communities 〜 植物コミュニティの形成 〜
植物は森やその他の自然環境の中に存在しますが、決して単独ではなくコミュニティ(群落)を作って生育しています。葉を落とし、植物自体が変化して作り出す環境は、生態系を作り、他の生き物と一緒にコミュニティを形成していきます。目に見えない微生物が細かい部分のコンディションを整え、大きな植物を育てるのに役立っています。
by David Joyce

1、 植物群落を作る環境要因
植物は生育環境に合わせて進化し、環境適応した体になっています。そこがどのような環境か知ること、それに適応している植物はどのような植物か知ることで環境にあった植物を選ぶことができます。

① 温度
19世紀初頭、自然学者アレクサンダー フンボルドにより赤道から北極、南極の植物の分布を示した植生帯の等温線地図が作られました。それは単純化しすぎていて、等温線上にある植物の関係性を示すのは難しいものでしたが、植物分布が温度によりつながりがあることを世界に初めて伝えました。
40℃を超える地域では酵素が健全に働かないなどの理由でその地域への分布が難しい植物が増えます。また、零下になる地域では冷たい温度から身を守るため秋に葉を落としたり、地際で春まで小さくなって冬越ししたりする植物が分布します。凍ることで枯死する植物があり、凍ることに適応した細胞に変化して生き延びる植物もあります。このように植物分布を知ることで温度と植物の生育は深く関わりがあることが知られるようになりました。
植物の発芽適温はその植物が自然界でどのような温度で生育するのかを知る良い指標となります。

② 雨量、湿度、土の湿り気
水は植物の命に関わる極めて重要なものです。光合成を行う物質となり、葉緑素生成にも使用し、光エネルギーで糖類生成働きもします。また、植物体内へ栄養素を運び、健康な植物を育てることにも重量な役割を果たします。
世界中で雨量は異なり、その雨量に合わせた進化をした植物にとって大気中や土中の水分量は生育を左右する最も大切な物質だと言えるでしょう。

③ 日当たり、日陰
光合成の仕組みは光をエネルギーに変えます。すべての緑の植物には光が必要ですが、それぞれ要求する光の量が異なります。
一年草は早く成長するため栄養やエネルギーを多く必要とします。発芽には光を嫌うものもありますが、生育には多くの光が必要です。林床地帯に育つものやゆっくり成長するものは多くの光を必要としません。開けた草原地帯でも曇り空が続く地域に生息する植物は多くの光を必要としません。
庭ではそれぞれの植物の成長にあった光の量を得られる環境で育てることが大切です。

④土質
土の材料の多くは岩で、時間の経過や凍ることにより岩が細くなり、砂状になっていったものです。植物は土の支えにより自立できます。土は水や有機物などの栄養素、空気など植物の成長に必要なものを保ちます。
植物の成長に必要なものが一番少ない土質がツンドラ地帯は凍ったピートと粘土の土壌で灰色をしています。温暖な落葉樹の森は茶色い大地です。火山灰が堆積した黒土は農業に必要な栄養素がたっぷり入った土です。熱帯雨林地帯には雨が降り続く雨季と乾季があります。土は鉄分と酸化アルミニウムを含む栄養素が少ない赤土からなる土壌です。このように土の質の違いは土の色にも現れます。
ほとんどの植物はその植物が栄養素を吸収するのに丁度良いph値を持っています。ph6.5を中心に数字が小さい方が酸性、大きい方がアルカリ性で、土中で働く微生物の動きに影響を与えます。

2、愛知県の夏の気候と植物

① 夏の環境と土壌
下記【資料1】を参考にすると年間の降雨量の約半分は高温になる6月〜9月に降っていることになります。最近刈谷市では8月の1カ月、全く雨が降らない年もあり、愛知県の夏は雨季と乾季を持つ熱帯雨林地帯の気候に近いのではないでしょうか。土壌は赤い粘土質の場所が多く、土の色も熱帯雨林地帯によく似ています。植物を植える際には有機質をしっかりすき込み、土壌改良してから植えましょう。

1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
最高気温(℃)9.010.113.919.924.127.230.832.828.622.817.011.6
平均気温(℃)4.55.28.714.418.922.726.427.824.118.112.27.0
最低気温(℃)0.81.14.29.614.519.023.024.320.714.18.13.1
降水量(mm)48.465.6121.8124.8156.5201.0203.6126.3234.4128.379.745.0

【資料1】名古屋の平均気温と降水量 1981〜2010・気象庁データより http://weather.time-j.net

②湿度と夏の一年草
6、7、9月は高温に加えて雨量が多い為、湿度も高くなります。土壌湿度が高く、高温多湿での生育を好む植物は生育しやすい環境になりますが、8月は降雨量が減るので高温多湿を好む植物にとっては水分が不足しがちになるので気を付けましょう。
また、高温乾燥を好む植物は土壌水分が多い状態を嫌うので、水はけの良い土壌や鉢植えなど乾燥しやすい環境を作る必要があります。

植物の性質高温多湿を好む乾燥を好む
主な原産地域熱帯地域アメリカ南部〜中南米
向いている植栽場所半日陰など湿気がたまりやすい場所水はけの良い土壌や日当たりの良い場所
花壇への水やりできるだけこまめに多少手を抜いてもOK
植物の種類アンゲロニア、イレシネ、アゲラタム、コリウスペチュニア、千日紅、ジニア、黄花コスモス

③ 夏の日照と多年草
同じ敷地内でも場所によって生育環境は異なります。夏越しが難しい植物でもその植物に合った環境を選ぶことで生育させることが可能です。

環境南向き/西向き東向き/明るい日陰暗い日陰
土の状態乾燥しやすい乾燥しにくい乾燥しにくい
光の状態1日中日差しがあるある程度の光量はある光量は少ない
夏の温度高温になる高温になりにくい高温になりにくい
向いている植物の性質高温と乾燥に耐えられる植物日なた好きだが高温多湿を嫌う植物湿気を好む植物
植物の種類◎常緑の多年草
タイム、ローズマリー
◎半耐寒性多年草
ゼラニウム、ペラルゴニウム
◎耐寒性多年草
エキナセア、オダマキ、ペンステモン
◎耐寒性多年草
ヘレボラス、アジュガ、ホスタ

 〈参考文献〉
The Garden Plant Selector / David Joyce


「フローラルガーデンの庭仕事」H29年1月20日の内容です。次回は2月17日「夏に活躍する植物」夏咲きの一年草と多年草。
■ フローラルガーデンの庭仕事講座/毎月第3金曜日 10:00〜11:30
イギリスのガーデン本を読み解きながら庭目線の園芸基礎知識を学ぶ勉強会。
園芸と庭づくりの基礎を学ぶとともにフローラルガーデンの植物について説明します。
〈講師〉 ケイズガーデン 近藤かおり(フローラルガーデンよさみチーフガーデナー) 
〈定員〉70名 〈参加費〉 無料
*お申込みはフローラルガーデン事務局0566-29-4330またはinfo@garden-yosami.jpまで


イングリッシュガーデンのピオニー

「多年草の増やし方」株分けとさし木

What is propagating plants ? 〜 「植物を増殖すること」とは? 〜
多くのバラエティに富んだ植物のグループを増殖することは、健康で丈夫な植物の存在を保ち、短命の多年草を衰える前に戻すことができ、装飾に使える植物をストックすることが可能になるということ。種まき、さし木、株分けなど、その植物に合った方法で増殖することはガーデナーにとって必要不可欠なスキルです。
by Alan Toogood

1、 多年草の株分け
宿根性の多年草(宿根草)を成長させる一番の方法が株分けです。年数の経った特別な植物や貴重な植物を増やすことで使える植物を増やすことができます。多くの宿根草は2〜4年毎に株分けすることで株を健康に保ち丈夫にします。
多くの植物は秋か冬または早春の休眠期に株分けは行います。多くの植物は暑く乾きやすい真夏と凍る真冬以外は株分け可能です。初夏に株分けすると良い植物もあります。プルモナリアやアイリスは新しい根が成長する時期に行うことで株分けによる傷が早く回復しダメージを受けるのを避けられます。株分けした植物は日陰に置いて養生しましょう。どのシーズンに株分けをしたとしても葉を落とすことと湿気を保ち回復するまで守ってあげることで成功させることは可能です。
株分けをするために掘り上げた時が土を再生させる良いチャンスです。新しい堆肥をすきこみ有機質を足しましょう。

【株分け時期別特徴】
① 晩秋から早春の休眠期
〔代表的な植物〕キク、アスター
〔株分けのタイミング〕毎年または1年おき
〔特徴〕晩夏に咲く。細かい根が多い植物

② 初夏の新しい根が成長する時期
〔代表的な植物〕プルモナリア、ジャーマンアイリス
〔株分けのタイミング〕3年に1度
〔特徴〕毎年新しく球根や株が増える

③ 晩夏〜初秋(花芽形成後)
〔代表的な植物〕ヘレボラス(クリスマスローズ)、ピオニー(芍薬)
〔株分けのタイミング〕2〜4年に1度
〔特徴〕夏の半ばには花芽形成

2、さし穂はどうやって根を出す?

① 根が出る場所
成長する部分を含むさし穂は切られた細胞から新しい根を出す能力があります。植物の茎や葉、根に含まれる成長する部分は活発な分裂細胞(形成層)を持っていて、ちょうど表皮の裏あたり、茎が厚くなっている部分が新しい根が出やすい場所になります。特に節の近くや芽の成長点、根の先端などには活発な分裂細胞が多く集まっています。

② 根と茎と葉の違い
根と茎は異なるタイプのさし穂として成長します。茎で作るさし穂は茎から直接根が出ているように見えますが、実は多くの場合切り口を覆ったカルスから出ています。カルスは細胞を守る塊で、傷つけられると反応し形成されます。新しい根は茎から直接、またはカルス自身から出ています。
根挿しは根と茎、両方の成長する部分が含まれていることが必要です。葉挿しの場合、葉脈の近くから根を出します。

③ 植物の増殖能力
植物の細胞には生長するための重要な遺伝子が含まれていて植物はどの部分から分かれてもオリジナルのように生長します。枝は切られることで成長ホルモンが動きだし、芽や根が成長し始めます。

3、さし木のタイミング
どのタイプのさし穂も植物の成長サイクルに合わせることが成功するためには重要なポイントです。健康で活力のある枝を選びましょう。根が出るかどうかはそのコンディションが大きな影響を与えます。すべての宿根草が株分けに向くわけではありません。正しい方法を見極めることがガーデナーとしてのスキルアップにつながります。カレンダーに記録し、ガイドを作ることをお勧めします。

4、さし穂の作り方と管理方法
茎の太さ、節の付き方などにも寄りますが、目安として多年草は5cm前後(シュラブは10cm前後)になるようにします。クレマチスなど節と節の距離が長い場合1節でさし穂を作り、地際の位置に節が来るように挿します。乳液が出る植物は切り口には灰をつけて。落葉樹はビニールやペットボトルで覆って湿気が保てるようにすると根が出やすいでしょう。常緑樹は風通しが悪く湿気がたまるのを嫌うので何も覆わず日陰で管理します。

〈さし穂作りの注意点〉
◎ さし穂の中に2節以上含めるように5〜10cmで切る(節が地上と地下にあるようにする)
◎ 一番上の一対の葉を残し下の葉は落とす(葉が細い場合は上半分程度の葉)
◎ 葉は付け根の芽を痛めないようにハサミで切り落とす(手で取ると芽も取ってしまうため)
◎ 水分蒸散を調整するため葉の先端を半分程度にカットする(葉が大きかったり分量が多すぎる場合)
◎ 水の下がりやすい先端や花は取り除く(脇芽は出来るだけそのまま)
◎ 茎の上下は節から5mm程度離れたところを切る(下はで斜めにカット)
◎ 切り口が乾かないようにすぐ水につけ十分水あげをする(1時間程度)

5、さし穂の種類別特徴

①ソフトウッドカッティング(シュートが出る時期の硬くなっていない新芽)
〔さし木時期〕春から初夏(植物によって向く時期が異なるが新芽が出ていれば年間通してOK)
〔根が出るまで〕2〜3週間
〔代表的な植物〕アジュガ、カンパニュラ、ユーフォルビア、モナルダ、ペンステモン、ペルシカリア、フロックス(ロックガーデンタイプ)、ルドベキア、セダム、ベロニカ、シスタス、テウクリューム

② セミハードウッドカッティング(色が濃くなり、硬くなり始めたシュート)
〔さし木時期〕秋〜早春(落葉樹は葉が落ちた後、芽が動き始める早春まで)
〔根が出るまで〕半年以上
〔代表的な植物〕落葉樹の多く、常緑樹の多く、半耐寒性多年草の多く、コニファー、ラベンダー、イベリス、ペンステモン、ベロニカ、シスタス、バラ、サルビア、テウクリューム、クレマチス

③ ハードウッドカッティング(熟して硬くなったシュート)*その年に成長したものに限る
〔さし木時期〕初夏〜盛夏(落葉樹は葉が付いている間、常緑樹は成育期)
〔根が出るまで〕半年以上(初秋に挿して晩春に出来上がる)
〔代表的な植物〕落葉樹の多く、常緑樹の多く、ラベンダー、バラ、エルダー

④ ルートカッティング
〔さし木時期〕晩秋〜早春(デリケートな植物は早春)
〔根が出るまで〕3〜6か月
〔代表的な植物〕アカンサスモリス、アンチューサ、アネモネ、エキナセア、フロックス、バーバスカム

〈参考文献〉
The Royal Horticultural Society PROPAGATING PLANTS / Alan Toogood
SUCCESS WITH CUTTINGS / Chris & Valerie Wheeler


「フローラルガーデンの庭仕事」H28年12月16日の内容です。次回は1月20日「多年草の増やし方」株分けとさし木。
■ フローラルガーデンの庭仕事講座/毎月第3金曜日 10:00〜11:30
イギリスのガーデン本を読み解きながら庭目線の園芸基礎知識を学ぶ勉強会。
園芸と庭づくりの基礎を学ぶとともにフローラルガーデンの植物について説明します。
〈講師〉 ケイズガーデン 近藤かおり(フローラルガーデンよさみチーフガーデナー) 
〈定員〉70名 〈参加費〉 無料
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イングリッシュガーデンのコンテナ

「コンテナで楽しむ小さな庭」鉢植えで育てる植物

What is container gardening ?〜 コンテナガーデニングって何? 〜
コンテナガーデニングはあなたの園芸の幅を広げます。毎日庭仕事出来なくても、広い庭が無くても、おいしいハーブやワイルドストロベリー、夏に涼しげな白い花を楽しむことが出来ます。どんな所でも、もちろん室内でも、小さな喜びを感じさせてくれるでしょう。
by Stephanie Donaldson

1、 コンテナの種類
どんなコンテナを選ぶかはどこで使用するかが重要なポイントになります。重さや質感、コンテナの素材により様々な選択肢があります。

①テラコッタ
〔利点〕時間が経つほど味が出る
〔欠点〕重い、霜により破損する可能性あり

②木製コンテナ
〔利点〕色や素材感で雰囲気を変えることが出来る
〔欠点〕塗装など時々メンテナンスが必要。時間の経過とともに朽ちていく

③石製コンテナ
〔利点〕耐久性があり、魅力的なデザイン
〔欠点〕とても重く、高価

④鉄製ポット
〔利点〕メンテナンスフリーで多目的に使用出来る
〔欠点〕動かすのに重い

⑤ブリキ製カン
〔利点〕動かしやすい。ファッショナブル
〔欠点〕穴を空ける必要がある。 時間の経過とともに朽ちていく

⑥ファイバー製コンテナ
〔利点〕軽い。時間経過した様な見た目で見栄えが良い
〔欠点〕短命

⑦バスケット
〔利点〕軽い。魅力的な素材感
〔欠点〕湿気により朽ちる

⑧その他(靴、タイヤ等)
〔利点〕見た目が楽しい
〔欠点〕短いサイクルで交換が必要

2、土の種類
どんな培養土を選ぶかによって植物の成長の仕方が異なります。

①スタンダード培養土
ピートモス主体で水持ちと排水性を良くしたもの。通常肥料も入っている

②酸性培養土
ピートモス主体でphを調整していないもの。ツバキやエリカなど酸性好きな植物用

③ピートフリー培養土
ピートモス以外をベースにしているもの。*環境保全のため

④黒土ベース培養土
肥沃な黒土をベースにしている。微量要素や肥料分を黒土から補える。ピートモス主体より重い

3、コンテナ栽培の基本
①コンテナの中の環境
コンテナは限られた環境の中で植物を育てます。地植えでは土の中に水分や肥料分が蓄えられていて植物が手に入れやすい環境になっていますが、コンテナでは水分は不足しがちで、肥料分も意識して補う必要があります。特に野菜や花を繰り返し咲かせる一年草やゼラニウムなどの多年草は、有機質の多い肥料持ちの良い土で定期的に肥料を補いながら育てます。

②水やりとマルチング
水やりには特に注意が必要です。どんなコンテナにも必ず排水用の穴を空け、底に水が溜まらないようにして根腐れを防止します。また、乾き過ぎによるダメージを防ぐため、土の表面に砂利やバークチップ、ワラなどを敷くと良いでしょう。貝殻や割れたテラコッタなども利用できます。

③水やりのタイミング
通常、土の状態や植物が乾いているサインを出しているのを確認して行います。早朝か夕方が水やりのベストタイムです。暑い日中の水やりは植物の根や葉を傷めることがあります。
すでに水枯れを起こしてしまっている植物には日中でも水を与える必要があります。出来ればコンテナを日陰に移動して水やりを行うようにしましょう。

④虫と対策法
⑴アブラムシ
新芽ややわらかい茎にダメージを与えるアブラムシを健康的に減らす方法は、それを食べるハナアブやテントウムシを増やすことです。また、一番良い方法は適度な水圧で洗い流すことです。早めの対策でアブラムシが運ぶ病気にかかるのを防ぐことが出来ます。

⑵ナメクジとカタツムリ
ナメクジやカタツムリは粘液を使って新芽ややわらかい実を夜通し食べ尽します。すべてのガーデナーに嫌われる害虫ですが、ペレット薬を多く使って彼らをコントロールしようとすることは土を汚染することになります。
暗い所に集まる習性があるので、日中鉢底やレンガの下に集まっている彼らを集めて塩水につけて退治しましょう。また、食べ終わったグレープフルーツの皮はかれらの大好きな隠れ家になります。銅のリングをつないで植物に近づけない工夫をすることも出来ます。

4、コンテナの楽しみ方
日本では一般的にコンテナを寄せ植えで楽しむことが多いですが、目的によって様々な楽しみ方があります

①寄せ植え
〔目的〕狭い場所、景色のワンポイントに
〔特徴〕ひとつのコンテナで様々な植物を組み合わせる
〔適した場所〕玄関先、庭のフォーカルポイント

②寄せ鉢
〔目的〕地植え出来ない場所に
〔特徴〕大小様々な鉢にそれぞれ植物を植え(1〜2種類)、組み合わせて庭のような景色を作る
〔適した場所〕デッキ、テラス、コンクリート上

③ハーブや野菜のコンテナ
〔目的〕新鮮な食材調達
〔特徴〕収穫してすぐ料理に使え、実用的
〔適した場所〕窓辺やテラスなどキッチンに近い日当りの良い場所

〈参考文献〉
The Ultimate Container Gardener / Stephanie Donaldson
ORGANIC CROPS IN POTS / deborah schneebeli-morrell


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